正     義

ルシファー
 だいたい俺は、正義という奴が嫌いなんだ。特に、神の正義という奴が。
 人間は、戦や争いをする時、決まって、神の正義を持ち出す。そのくせ、戦争の残虐さや悲惨さを問題にする時は、今度は、決まって俺達の性にする。何なんだ。悪いのはいつだって俺達だ。
 戦いの場で、神の名を口にする。神の名の下なら、どんな、残虐も許されるというのか。俺達の名の下なら、どんなに正しいことも間違いか。
聖霊
 人間同士が、争った時、どちらか一方に、神が、加担すると言う事はありえない。なぜなら、絶対である神が、どちらか一方が、正しくて、どちらか一方が、間違っているなどと言われるはずがない。言えば、それは、神ではない。

ルシファー
 神は、ずるい。この世に争いの種を蒔いたのは、神ではないか。
 生きとし、生きる物、全てに、死という過酷な運命を与え。男と女の差別を与え。快楽という果実の裏に、どす黒い欲望という、邪悪なものを忍ばせた。
 だから、人間は、神の名の下に相争うようになるのだ。
 だいたい、人間は、欲にまかせて、ひどいことを、しあがる。
 自分の快楽の為に、命をもてあそぶなんて序の口だ。
 そうやって、やった悪さを、皆、俺達の性にする。
聖霊
 人間の都合で、神を解釈しようとするから、そうなるのだ。
 欲があるから、人間は向上をする。
 男と女がいるから、恋が生まれる。
 この世の有り様、全て、悪く捉えれば、全てに不満が生じる。不満は、不幸の種だ。
 なぜ、この世の全てを、前向きに、肯定的に、神からの授かり物として受け入れられない。
ルシファー
 この世の全てを、あるがままに受け入れろと言うのか。
聖霊
 そうだ。あるがままに受け入れてはじめて、それを活かすことができる。
 何もかもを否定し、破壊してしまったら、何も、生まれはしないではないか。
 神は、必要な物を、必要な時に、必要とするように、造られてい。
 欲望も、然り。
ルシファー
 アハハハ。
 チンボコは、ただ、小便を、するだけのために、ついているというわけでは、ないと言う訳か。
聖霊
 アハハハ。
 欲が、悪いのではない。自制できないのが悪い。
 自制するのは、人の意志だ。人の性根だ。
 包丁を、人殺しに、使うのは、人間である。人を殺すことが、できるからと言って、包丁が悪い、なくせというのは飛躍だ。
 包丁をどのように使うかは、包丁の性ではなく、人間の性である。
 それを包丁の性にするのは、人間の傲慢が為せるのだ。

 悪魔は、人の心に棲む。醜さ。怖れ。妬み。嫉み。憎悪。怨恨。怨念。嘘。偽り。不実。不平。不満。餓え。裏切り。独善。偽善。残虐。高慢。傲慢。欺瞞。強欲。嫉妬。見栄。外聞。妄想。執着。呪い。そういった想いを映し出し、負わされているにすぎない。




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