2001年1月6日

神について

救世主

　粗末な服装に身をくるんだ一団がいた。その一団のリーダーと思しき男がもっそりと立ち上がると、その方に話しかけた。男の顔は、日に焼け、額に刻まれた皺は、男がこれまで味わってきた辛酸を深く刻み込んでいた。

　私達は、救世主を求めて、何世代も旅してきました。救世主は、何処に居られるのですか。救世主は、いつ現れるのですか。

　その方は、男の瞳を凝視しながら、気の毒そうな顔をして、男達に話しかけられた。

　救世主はいません。正確に言うと、少なくとも、あなた方が、望むような救世主は居ません。

　そう聞くと、男は、その方の話を遮るように、

　救世主はいない。

　そう呟（つぶや）き。落胆を隠せない様子で、座り込んでしまった。

　その方は、暖かなまなざしをその男達に向けながら話を続けられた。

　間違ってはいけません。あなたが望むような救世主はいないと言っただけです。
　なぜ、あなたは、救いを求めるのです。

　神にあなた方は何を求めるのです。
　あなた方が悔い改めない限り、あなた方が望む神の国は実現できません。
　求めるならば、自（みずか）らに求めるべきです。
　あなた方が蒔いた種は、あなた方が刈り取らなければなりません。
　真の救世主は、あなたの内に求めなさい。

　あなたを救えるのは、あなた自身しかいません。
　言うなれば、あなた自身しか、あなたの救世主にはなれないのです。
　大体、あなたは、何を救世主に望のですか。
この世の諍（いさか）い や争いの原因は、あなた方にあるのです。
　あなた方が悔い改めない限り、あなた方に救いはありません。
　自分自身以外にこの世を救う者を求めても無意味です。

　たとえ、あなた方が望むような救世主が現れたとしても、所詮、あなた方が変わらなければ、場所が変わるだけで、本質は、何も変わりません。
　この世を変えられるのは、あなた方しかいないのです。
　救世主を求めるのならば、あなた方自身の心の中に求めなさい。
　救いを求めるならば、あなた自身に求めなさい。

　あなたが変われば、世界が変わるのです。
　あなたが変わらなければ、あなた以外に救いを求めたところで無駄です。
　あなたこそがこの世を変えるのです。
　それ以外にこの世を救う術はありません。
　救世主とは、あなた自身であり、あなたの内に居られるのです。
　それ以外に求めてはなりません。
　あなたが、あなた自身をそして、この世を救うのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　


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