浄玻璃の鏡
ルシファー わしは、神が憎いのだ。神が造ったこの世が憎いのだ。
聖霊 神は、この世の愛憎を超越した存在です。故に、神を憎んでも無意味です。
しかし、あなたはこの世の一部です。この世の全てを憎むのは、あなた自身を憎むことなのです。
ルシファー俺は、神の愛する物、全てを呪ってやる。
神が造った、この世の全てを、呪ってやる。
聖霊 神は、呪いや怨恨を超越した存在です。あなたがいかに神を呪っても神は、何でもありません。
あなたは、神が、お造りになった存在の一部です。ですから、神のお造りになった全てを、呪うことは、あなた自身を呪うことです。
聖霊 それに、神は、この世の全ての者を愛されておられる。
ルシファー 何、この俺もか。
聖霊 そうです。神の愛される物、全てを呪えば、その呪いは、あなた自身に降りかかるのです。
ルシファー 神が十善を成すと言うなら十悪をしてやる。
汝、殺すなと言うなら。殺してやる。
汝、盗むなと言うなら。盗んでやる。
汝、騙すなと言うなら。騙してやる。
汝、姦淫するなと言うなら。淫してやる。
汝、愛せよと言うなら。憎んでやる。
汝、裁くなと言うなら。裁いてやる。
汝、癒してやれと言うなら。苦しめてやる。
汝、許せと言うなら。呪ってやる。
聖霊 神は、十善を成せとは言われてはおらぬ。先ほどから言うように、神は、善と悪とを超越したお方。ただ、自分を大切にするならば、十善を為せといわれているだけだ。それが、真実だ。
つまり、汝が、殺せば、汝は、殺される。
汝が、盗めば、汝は、盗まれる。
汝が、騙せば、汝は、騙される。
汝が、淫すれば、汝は、堕落する。
汝が、憎めば、汝も、憎まれる。
汝が、裁けば、汝も、裁かれる。
汝が、苦しめれば、汝は、苦しめられる。
汝が、呪えば、汝は、呪われる。
ルシファー まるで鏡に向かって話しているようだ。
聖霊 神は、この世の鏡です。あなたはこの中に何が見えます。
そういうと、聖霊は、一つの鏡をルシファーの前に差し出した。
ルシファーは、鏡が向けられると、最初は怖れ、顔を隠した。それから、おそるおそる鏡の方を見た。そして、鏡に映った己が姿を見つけると、それを凝視して叫んだ。
ルシファー これが俺の姿だというのか。
鏡の中に映っていたのは、何かに脅え泣き叫ぶ幼子の姿だった。ルシファーは、一度、目をそむけるとまた鏡の中を覗いた。そうすると今度は、聖霊の姿が映し出されていた。ぎょっとしたように目を閉じ。ゆっくりと目を開けたルシファーの前に映し出されたのは、醜く歪んだ、自分が姿であった。
聖霊 鏡に映ったのは、おまえの無垢なる魂と内なる神と今の姿だ。さて、どれが真実の姿かな。
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