神について思う

試  練


試練という思想は、儒教、仏教、キリスト教、イスラム教、全ての宗教に共通してあります。

孟子にいわく。

故に天の将に大任を是の人に降さんとするや
必ず先づその心志(しんし)を苦しめ
その筋骨を労し
その体膚(たいひ)を餓やし
その身を空乏し
行ひその為すところに払乱せしむ。

心を動かし、性を忍び
その能はざる所を曾益せしむる所以なり

人は恒(つね)に過ち、
しかる後に能く改む
心に困しみ、慮に衡(はか)りて
しかる後に作(おこ)る

色に徴(あら)はし、声に発し
しかる後に喩(さと)る。

入りては則ち法家、払士(ひっし)無く
出でては則ち敵国、外患無くば
国は恒(つひ)に亡ぶ。

然る後に憂患に生き、安楽に死するを知るなり


天の将に大任を是の人に降さんとするや
必ず先づその心志(しんし)を苦しめ
その筋骨を労し
その体膚(たいひ)を餓やし
その身を空乏し
行ひその為すところに払乱せしむ。

心を動かし、性を忍び
その能はざる所を曾益せしむる所以なり

人は恒(つね)に過ち、
しかる後に能く改む
心に困しみ、慮に衡(はか)りて
しかる後に作(おこ)る

色に徴(あら)はし、声に発し
しかる後に喩(さと)る。

入りては則ち法家、払士(ひっし)無く
出でては則ち敵国、外患無くば
国は恒(つひ)に亡ぶ。

然る後に憂患に生き、安楽に死するを知るなり

天が、その人に何らかの使命を与えようとするときは
必ず、先にその人を苦しめるものです。

どうするのかというと、
その人の心を苦しめる。
志が挫折するような事態を起こす。
そして
過剰な肉体労働を強いて、
体力を使い果たさせ、
餓えに苦しませ
その身を極貧暮らしにまで追い落し
その人の行おうとすることに
ことごとく反する事態を招き起こすのです。

天はなぜそのようなことをするのでしょう。

それは、
その人の心を鍛え
その人を忍耐強くし
できないことを
できるようにさせるためです。

人は誰でも過ちをおかします。
過ちを犯す自分を自覚して、
それを改める。
そのことで人は成長します。

千々に乱れる心
激高し、いたたまれない感情
それが、弱さ、ということです。
その自分の弱さを自覚して
はじめて人は成長できる。

天は、その人の苦悶が顔にまで出て
思わず悲痛な叫び声をあげざるをえないところまで
徹底してその人を追い込みます。
それを乗り越えて
はじめて天は
その人に、使命を与えるのです。

国家も同じです。
内に厳しく法を守る臣下がなく
身を以て諌言する賢臣もなく

外に強大な敵国がなく
脅かしてくる外患さえもなならば
その国はやがて滅んでしまいます。

人が生きるということは、
悩み苦しむ苦難の道です。
死は安楽の道でしかないのです。


原文

故天將降大任於是人也
必先苦其心志
勞其筋骨
餓其體膚
空乏其身行
拂亂其所爲
所以動心忍性
曾増其所不能
人恒過
然後能改
困於心
衡於慮
而後作
徴於色
發於聲
而後喩
入則無法家拂士
出則無敵國外患者
國恒亡
然後知生於憂患而死於安樂也

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